人生は神の演劇、その主役は己自身である※
人生は一回性、しかも芥子の実ほどの僅かな一生。これから地球が永続する数億年に比べ、なんと小さいことか。
「人生は演劇である。・・・・・悠久の古から永遠の未来にまで踊り続けている、大規模の幕切れなしの演劇である。無料、露天大活劇、新旧、喜悲、男女、老若、とりどりの代演劇である」※。
とらえどころのない人生を充実させ成功に導くのは、しっかりとした“時間計画”である。それが、唯一無二のシナリオとなり、昼夜の別もない人生という廻り舞台で、理想の姿を演じさせる。そして、その主役は、あなた自身である。
耐性の実験「マシュマロテスト」
フランスの哲学者ルソーは、教育論『エミール』の中で「子供に最も大切なこと、それは“耐性”である。物事に耐える力を身につけさせることだ」と説いているが、人生の時間計画においても、カギを握るのはこの“耐性”である。
1960年代、米国スタンフォード大学で心理学者による興味深い実験が行われた。「マシュマロテスト」※と呼ばれる実験で、被験者の4歳児にマシュマロを一つずつ与える。実験者が部屋を出て戻ってくるまで食べずに待てたら、ごほうびにもう一つマシュマロをあげる約束をする。結果を記録し、その子どもたちが成長して高校を卒業するまで追跡調査を続けた。すると、マシュマロを食べずに我慢できた子どもは、そうでない子どもに比べ、対人能力に優れ、成績も優秀である傾向が得られたという。
耐性、つまり我慢強さを備えた人は、対人関係においても自分をコントロールし、根気強く相手とコミュニケーションをとろうとする。また、いろいろな興味や遊びたい誘惑などを断ち切って、勉学に打ち込むことができる。
人生の時間計画 -25年後の自分-
“時間計画”の成功例を、一つ挙げよう。
元日本IBM社常務の井上富雄氏は、入社時に25年先、50歳の自分をイメージした。IBMの常務になり、ゆくゆくはコンサルタントとして独立するという人生の25年計画を立てた。
25年、20年、15年、10年、5年、1年、1ヶ月、それを1週間ごとにおとしこむ。計画は、仕事についてだけでなく、趣味のダンスを何種類踊れるようにするか、家庭については、30歳までに結婚し、32歳で子供をもうけ、家族旅行はいつどこへ行くかなど、生活全般に及ぶ。
計画が書かれた手帳は、常に胸のポケットに入れ肌身離さず行動を共にした。そして見事に計画通り、40代でIBM常務に就任、それまでに培った経験を活かし、やがてコンサルタントとして独立した。
井上氏の著書『ライフワークの見つけ方』(1978年/主婦と生活社)は、25年計画等、人生時間の計画の大切さを説き、大ベストセラーとなった。経営者をはじめ、多くの人々の人生に多大な影響を与え続けている。
自分人生を経営しよう
○○年後の自分――。具体的なイメージを計画してみよう。「マシュマロテスト」の結果にも表れたように、大切なのは実行しようとする情熱と、あらゆる“時間泥棒”から自立する“耐性”を持ちえるかどうかである。
例えば休日、「午前中にこの本を読む」「午後は出張の報告書を書く」「夕食後、明日返却するDVDを観る」「23時には寝る」と計画したとする。
ところが友人から「夕食を一緒に食べて、カラオケに行こう」と誘われた。断れば「付き合いが悪いと思われ、コミュニケーションに支障をきたすかもしれない。自分自身も我慢しなければならない葛藤がある。
そのような場合は、食事は明日にしてもらうよう友人に相談し、明日の予定を繰り上げて今日のうちに済ませてしまうといった賢いやりくりをすることも必要になってくるであろう。要は、自分で決めた計画は多少のズレがあっても必ず守ることである。
マシュマロが我慢できる人は、忍耐強く、満足を後回しにすることを比較的苦にしない。自分人生の経営者という大役をこなすには、苦しいことを先送りし今すぐ楽しみたいという誘惑に打ち勝ち、自制できるかどうかが重要である。
人生時間をしっかり把握し、“耐性”を備えていくことができれば、たとえ厳しい社会環境の中でも自分を成長させ、さらに進んで社会へ貢献することもできるようになる。
薄めた牛乳のようではない、濃い、充実した一生を送ろう。
自分人生の主役として――。



