成年年齢引き下げに伴う贈与税・相続税への影響
2022/06/06
~18歳に成年年齢が引き下げられました~
民法の改正により、令和4年4月1日から、成年年齢が「20歳」から「18歳」に引き下げられました。明治29年に民法が制定されて以来の成年年齢の見直しです。
これに伴い、贈与税・相続税においても、年齢判定で20歳を基準としている要件について18歳に引き下げる税制改正が行われています。
贈与・相続等の時期により年齢要件が異なっていますので注意が必要です。
区分 | 受贈者や相続人等の年齢要件 | ||
令和4年3月31日以前 の贈与・相続の場合 |
令和4年4月1日以後 の贈与・相続の場合 |
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贈与税 | ①相続時精算課税 ②住宅取得資金の非課税等 ③贈与税の特例税率 ④相続時精算課税適用者の特例 |
その年の1月1日において 20歳以上 |
その年の1月1日において 18歳以上 |
⑤事業承継税制 | 贈与の日において 20歳以上 |
贈与の日において 18歳以上 |
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⑥結婚・子育て資金の非課税 | 結婚・子育て資金管理契約締結の日において 20歳以上50歳未満 |
結婚・子育て資金管理契約締結の日において 18歳以上50歳未満 |
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相続税 | ⑦未成年者控除 | 相続等の日において 20歳未満 |
相続等の日において |
【参考:国税庁HP】
① 相続時精算課税
原則として60歳以上の父母や祖父母から子や孫への贈与について、「暦年贈与(1年間にもらった財産の合計が110万円までは贈与税を課税しない)」と選択適用できる制度で、2,500万円までは贈与税が課税されず、これを超えた部分について一律20%の贈与税を課税する制度です。
贈与した財産は、相続が起きた際に、相続税の課税対象に再度取り込まれて相続税が計算され、既に支払った贈与税額は相続税額から控除されます。相続税の計算に取り込まれる評価額は、相続時の評価額ではなく、贈与時の評価額となります。なお、いったん相続時精算課税を選択すると同じ父母や祖父母からの贈与について「暦年贈与」へ変更することはできません。
② 住宅取得資金の贈与の非課税等
父母や祖父母から住宅の新築、既存住宅の取得、増改築に充てるための資金の贈与を受けた場合に以下の区分で非課税となる制度です。
贈与時期 | 非 課 税 限 度 額 | |
耐震、省エネ、 バリアフリー等住宅 |
一般住宅 | |
令和4年1月~令和5年12月 | 1,000万円 | 500万円 |
③ 贈与税の特例税率
特例税率は、父母や祖父母が子や孫に贈与する場合の税率です。300万円超の
贈与については一般税率に比べ軽減されています。
④ 相続時精算課税適用者の特例
父母や祖父母から子や孫への住宅の新築、既存住宅の取得、増改築に充てるための資金の贈与で、一定の要件を満たすときは、父母や祖父母がその年の1月1日に60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができる制度です。
①から④についての注意点
同じ令和4年の贈与であっても、3月31日以前の贈与か、4月1日以後の贈与かで適用される年齢要件が異なります。その年齢要件は「その年の1月1日」時点において判断します。
従って、贈与を受ける人が令和4年1月1日時点で18歳~19歳の場合、4月1日以後の贈与の場合は適用対象となりますが、3月31日以前の贈与の場合には、適用対象となりませんので注意が必要となります。
⑤ 事業承継税制
後継者が経営承継円滑化法の認定を受けている非上場株式を贈与または相続により取得した場合に、その株式に係る贈与税・相続税について、一定要件のもと、
納税を猶予することができ、後継者の死亡等の時に、猶予されている贈与税・相続税が免除される制度です。この特例の後継者は、贈与の日において20歳以上であった年齢要件が、令和4年4月以後は18歳以上となりました。
⑥ 結婚・子育て資金の非課税
父母や祖父母から、結婚・子育てに充てる資金を贈与された場合、1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。令和4年3月までは、金融機関との契約締結日に20歳以上50歳未満の子や孫が対象でしたが、4月以後は18歳以上50歳未満となりました。
⑦ 未成年者控除
相続人の中に未成年者がいる場合、その未成年者に対し相続税が一定額控除される制度です。控除の額は、未成年者が成人に達するまでの年数に10万円を乗じた金額です。令和4年3月までは相続の日において20歳未満でしたが、4月以後は18歳未満となりました。
「遺産分割協議」にも成年年齢の引き下げが少なからず影響を及ぼします。
相続人の中に、未成年者がいる場合、その未成年者は遺産分割協議に参加できない(法律行為が制限される)ため、家庭裁判所で特別代理人の選任を受けなければならない場合があります。この場合、特別代理人がその未成年者に代わって遺産の分割協議を行います。
令和4年4月1日以後は、遺産分割協議時点で18歳以上であれば、本人が遺産分割協議に参加することができるようになりました。