時間外労働管理の重要性
2024/03/13
労働時間管理は労働者と企業の双方にとって重要な要素です。また2024年問題と言われる、建設業、自動車運転の業務、医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業の4業種における労働時間上限規制の猶予期間終了により関心も高まってきています。法的にも労働時間管理が義務付けられており、適切な管理を行うことで企業の信頼性向上にもつながります。今回は、改めて労働時間管理の重要性に関して解説していきます。
1.労働時間管理の社会的背景と法的義務
労働時間管理は、長時間労働の抑制や労働者の健康を守るために社会的な課題として取り上げられています。労働基準法(以下「労基法」といいます。)においても、労働時間の規制が明確に定められており、企業はこれを遵守する法的義務があります。例えば、1日の労働時間や週の所定労働時間、休日労働などに関して法律で制限が設けられています。労働者の健康と労働環境の改善を目指す社会的な動きと合わせて、労働時間管理は重要なテーマとなっています。
2.労基法改正後の時間外労働の上限規制の内容
時間外労働の上限規制は、2019年4月1日に施行された改正労基法により定められました。
この労基法の改正以前は、法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合や法定休日労働をさせる場合には、労基法第36条に基づく労使協定(36協定)を締結すればよいとされていました。なお、36協定で定める時間外労働については、厚生労働大臣の告示で上限の基準が定められておりましたが、罰則規定はありませんでした。すなわち、上限の基準を超えていても行政指導ができるにとどまり、基準には法的拘束力がありませんでした。
しかし、2019年4月1日に施行された改正労基法において、時間外労働の上限が定められました。これは、一連の働き方改革として行われた労働関係法令の改正によるもので、労働者の健康確保や労働生産性の向上、ワークライフバランスの改善等を目的としています。具体的には、36条協定による時間外労働は月45時間、年360時間までが原則であり、臨時的な特別な事情があり労使が合意する場合には年720時間等の上限まで時間外労働が認められることになりました。
3.労基法改正後の時間外労働の上限規制の内容
2019年4月1日施行の改正労基法以前は、時間外労働の上限について罰則規定がありませんでしたが、改正労基法により、罰則規定が新たに設けられました。
改正労基法では、次の①・②のいずれかに該当すれば、6か月以下の懲役又は30万以下の罰金(刑事責任)の対象となります。
① 時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間以上となった場合 ② 時間外労働と休日労働の合計時間について、2か月から6か月の平均のいずれかが80時間を超えた場合 |
ここで注意が必要なのは、①・②の何れも時間外労働と休日労働の合計時間を基準としていることです。そのため、労働時間の管理として、時間外労働と休日労働をそれぞれ計算するだけでなく、時間外労働と休日労働を合計した時間も計算して、上記①と②に該当しないかをチェックしなければなりません。
なお、36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせた場合にも、労基法違反となり、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金の対象となります。
※上記のように、より厳格化された労働時間規制により、労働時間管理の重要性はより増しており日々
の労働整備として意識していく事が重要です。