事業承継やM&Aの"今"をデータと事例でみる! ①事業承継の実際
2024/06/04
最近、エビデンス(証拠)に基づく経営コンサル本やマーケティングの本が増えています。今まで、「何となく、こうじゃないかな」や「良く言われていることだから」と判断していたものが、AI等の発達により"実際は異なっていた"、"感覚と異なっていた"と言うことが数多く発見されていることも後押しになっていると思います。
感覚論では、それほどいるとは思わない方が殆どではないでしょうか。 |
①事業承継の実際
世界中で猛威を振るったコロナウイルス感染症も以前ほどではなくなり、外国人観光客によるインバウンドも増え、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進みつつあります。財務省の発表によると、中小企業の売上高は感染症流行前の水準に戻りつつあるようです。 |
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足下では物価は急激な上昇傾向にあ り、企業物価指数と消費者物価指数は共 に大きな伸びを示しております。 物価高は、多くの中小企業にとって収 益の圧迫要因となっており、経費削減や 業務効率化などにより収益力向上等に取 り組まれていることも白書から見て取れ ます。 |
このような中、新たな問題として深刻な人材不足や労働条件の制限といった課題もあります。 中小企業庁等の調べによると、従業員数の今現在の状況について「過剰」と答えた数から「不足」と答えた数の割合(従業員数過不足数ID)は右図のように急激に減少しております。 深刻な人手不足がグラフから見て取れます。 |
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物価高や人手不足などに対応するため、業務プロセスの省力化による生産性の向上等に取り組みが必要とされていると報告書には記載されています。 2021年の中小企業庁の先行研究では、経営者年齢が若い企業ほど新たな取り組みや設備投資などに果敢に挑戦する企業が多いことも示されています。 |
1.廃業・解散の誤解
中小企業白書には廃業・解散についての考察があります。以前より良くある誤解の一つとして「赤字だから廃業する」企業が多いと思われていますが、実際は黒字での廃業等が6割となっています。ただし、コロナ禍の2年に関しては若干傾向に変化が生じて2年連続6割を下回る傾向が生じています。 |
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2.経営者の高齢化
コロナ禍を経て、以前から指摘されていました経営者の高齢化にも変化が生じています。
下の図は、年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布です。2000年においては経営者年齢の最も厚い層が50~54歳であったのに対して、2015年には65~69歳が最も厚い層であり経営者年齢の高齢化が一段と進んだ感があります。
その一方で2020年以降のコロナ禍で見ると、経営者年齢の厚い層が60~74歳と分散しており、コロナの大きな影響にて事業承継や廃業などにより経営者を引退した方が多いことも読み取ることができます。
また、久しく我が国の中小企業は後継者不在であることも度々取り上げられてきました。これに関しても、この2年で大きく変化し、コロナ禍前の平均65%で後継者不在率は推移していたものが、直前の調べでは、初めて60%を下回る結果となっています。 以上のことから、コロナ禍を経て事業承継等が一定程度進んだ様に考えることができます。 |
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3.誰に引き継ぎたいですか? 実際は誰に引き継ぎました?
次の表は、経営者の年代別に事業承継の意向を聞き取ったものです。これによると、経営者年代に関わりなく、「子供や孫に引き継ぎたいと考えている」割合は多く、年代が上がるにつれてその傾向は強くなることが見て取れます。
では、この経営者の意向が実際の事業承継においても同じことが言えるのかを見てみたいと思います。
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左の図は、近年事業承継をした経営者の就任経緯について調べたものです。これによると、親族内承継を意向として望んではいるものの、実際は従業員や社外への引継ぎ(いわゆるM&A)で全体の6割が占められている事実です。 |
この傾向は、直近において更に強く数字で表れております。
さまざまなデータからの考察ですが、いかがでしょうか? 会社の創業が「入口」としたら「出口」とも言える「事業承継」や「廃業・解散」などについて「考えていた通りだ」「実際はこうだったのか」などの点があったと思います。
4.事業承継、その後
中小企業の廃業・解散は、言わずもがなですが、中小企業の叡智や雇用が永遠に失われてしまいます。これは、地域や業界にとって、広くは我が国にとって大損害です。 事業承継の実現は、経営資源の散逸を防ぐことができると共に、それを機会に"事業の再構築"を進める機会ととらえる傾向もあるようです。 |
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また、事業承継を実施した企業の承継後9年間の売上高成長率について、同業種平均値と比較したところ、事業承継後2年目までは同業種平均を下回っているものの、3年目からは徐々に上昇しているのが見て取れます。特に5年目以降はその傾向が強く出ており、事業承継後の企業パフォーマンスは比較的高い傾向にあるとも言うことができます。 これは、事業承継後において、承継前にはどうしても"控え気味"だった設備投資や人材採用などが積極投資に転換し、結果が出てきている傾向と言えます。 |
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