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~「登記」に関する大きな2つの改正~ 「社長の住所の非表示」と「相続登記の義務化」 ①代表取締役等の住所非表示

過日、次のような見出しの記事が新聞などで掲載されました。

社長の住所を一部非公開...  社長の住所、希望すれば非公開可...  プライバシーの保護の観点から...

 これは、今年10月1日から 施行される 「代表取締役等の住所非表示措置」 について書かれたものです。
 現在、会社の登記情報は誰でも簡単に閲覧できることから、「社長の住所がさらされている」として住所公開見直しが要望されていたことを受けた改正です。ただし、いつでも「非表示」の申請ができるわけではなく、かつ一定の支障も伴う可能性があるなどの検討が必要です。

 今月のかわら版ではこの改正点と、既に4月1日から施行となっているこれまで任意だった不動産を相続した場合の相続登記の義務化も合わせて「登記についての大きな2つの改正」をお伝えします。
 どちらの改正も経営者の皆さまに直接影響のある内容となっておりますので、詳しく見ていきます。

①代表取締役等の住所非表示

1.改正までの経緯と現在の登記表示

 現在、会社の登記情報は誰でも簡単に閲覧できます。
 法務局に出向いて所定の手続きで登記事項証明書を請求するほか、インターネットでの「登記情報提供サービスを利用」でも閲覧可能です。

<登録事項証明書 見本>

202407-1.png

 このように、株式会社の場合、取締役は氏名のみの公開に対し、代表取締役については、番地までの住所も公開されていることから、公になっていることへの不安やリスクも指摘され、トラブル防止や個人情報・プライバシー保護の観点から、かねてより、住所公開の見直しが要望されていました。

2.変更される内容とその申し出の手続き

①登記事項の表示の変更

 これまで、市区町村、番地まで記載がされていましたが、非表示の希望をした場合には、市区町村までとなります。したがって、住所のすべてが記載されなくなるというわけではありません。東京都においては特別区まで、指定都市においては区までの記載です。

<登記事項表示のイメージ>

202407-2.png

② 申し出の手続き
<1> 登記申請と同時に申し出ること
 代表取締役等の住所の非表示は、
    ○ 設立の登記
    ○ 代表取締役などの就任の登記
    ○ 代表取締役などの住所移転による変更登記
 など、会社代表者の住所が登記されることになる登記申請と同時にする場合に限り、申し出ることができます。
 したがって、上記の登記申請と無関係に、住所非表示の申出のみを行うことはできません。また、非表示措置が取られるのは、上記の登記申請で記録される住所に限られるため、過去に既に登記されている住所を非表示とする申出もできません
 
<2> 所定の書面を添付すること
 非表示の申出にあたっては、非上場会社の場合には、次のような書面の添付が必要となります。
 1)会社を受取人とした書面が、その会社の住所宛に配達証明郵便で送付されたこ
   とを証明する書面など
 2)代表取締役等の氏名・住所が記載されている住民票の写しなど
 3)株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書類

3.住所非表示措置に伴う留意事項

① どの法人でも非表示の申し出はできる?
 この非表示措置が利用できる法人は、株式会社のみとなります。合同会社、一般社団法人など株式会社以外の法人では、非表示措置の対象ではないのですが、今後の改正の動向と有無が注目されます。

② 非表示の申し出をすれば、登記はしなくてもよい?
 代表者の住所非表示措置が取られた場合であっても、会社法上の登記義務が免除されたわけではありません。よって、代表者の住所の変更があった場合にはこれまで通り、登記申請をする必要があります。

③ 住所非表示の申し出をすれば、必ず非表示にしてくれますか?
 先述した登記申請と同時の申し出で、所定の書類を添付されているなど規定の要件を満たしているか登記官が判断することとされています。

④ 非表示となった代表者の住所の閲覧はできる?
 代表者の住所が非表示となっても、「法律上の利害関係者」は登記簿の付属書類の閲覧の請求により代表者の住所の確認ができます。この場合は、利害関係を明らかにする事由など利害関係を証する書面を添付する必要があり、閲覧も登記官の面前で行います。

⑤ 代表者住所の非表示を取りやめたいのだが・・・
 代表者住所の表示を復活させたい場合にはどうすればよいでしょうか。
 その場合には、非表示措置を希望しない申し出をすることで、いつでも終了させることができます。非表示の申し出とは異なり、登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことができます。なお、会社が本店所在場所に実在しないと認められた場合などには、登記官が職権により代表者住所の非表示措置を終了させることとなります。

4.会社代表者の住所非表示による注意点

 代表者住所が公にされることがなくなることで、プライバシー・個人情報保護が図られ・・・とは冒頭に書きましたが、この措置の申し出をする注意点も押さえておく必要があります。
 法務省では、次のように赤書きで注意喚起をしています。

※ 注意 ※

代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

 会社の諸契約締結時や融資取引実行時に準備する書類には一定の影響が出る可能性があります。

代表者の住所を登記事項証明書により証明できなくなるため、会社が銀行から融資を受ける際に今までよりも提出書類が増えたり、期間が若干長くかかったり、不動産取引で提出書類が増えたり(会社の印鑑証明など...)などの可能性も考えられますので、注意が必要です。

施行は、今年の10月1日です。

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