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コロナ後...。"税務調査"の本格的な時期となってきました!

 新型コロナは、" 税務調査" にも大きな影響を及ぼしました。
 令和2 年4 月の緊急事態宣言以降、感染症区分5 類移行となる昨年までは、国税庁が税務調査について、次の2 つの方針を打ち出し、この期間の税務調査はかなり件数が減少しました。
 ① 署内での「検温」や「症状の有無」の確認 など
 ② 調査の実施場所の「換気状態」の確認、及び実施する場合でも調査で訪問する「人数・時間」を最小限にて行うこと など
 税務調査の連絡があった場合には、顧問先の皆様の現状や業種、実施場所の換気状況の確認等々、いくつもの項目を確認しつつ、実施可能かどうかを含め協議していた期間でした。
 昨年から調査件数は徐々に元に戻ってきており、今年は7 月の定例人事異動後に例年通りの税務調査の状況に戻ってきています。
 税務調査は黒字法人が対象になりやすいとは言えますが、源泉所得税や消費税の調査など、赤字法人であっても税務調査が入ることは珍しくありません。
 今月のかわら版は、「税務調査」がテーマです。
 特にご注意いただきたい点を特集いたします。

①「親族への給与」は、調査の最重要ポイント

 法人・個人事業に限らず「親族」への「給与」は最重要チェックポイントです。


 社長や事業主に所得が集中すると所得税率が高くなるため、「働いていない人に給与が支払われていて家族に分散させていないか...、仕事に比して不適切に高くないか...」などの視点で確認をされます。
 毎日常勤していて、他の社員・役員と比べて、突出して高くない給与水準であれば問題にはなりません。もし高くても、専門性・熟練性などがあれば当然可で、「親族でない他の人でも、この給与は払いますか?」という質問に、説明ができることが必要です。
要は、「職務内容とその給与水準、勤務時間が説明できること」が大切です。


 よく確認される事例として、例えば社長の親が高齢の場合や遠方在住者の場合、子どもが小さくてフル勤務が難しいと思われる娘さん、などが挙げられます。
 これらにおいても、「職務内容とその給与水準、勤務時間がしっかり説明できるか」です。
 例えば、コロナを期に、リモートでの仕事も珍しくありません。出社が難しい状況下でも、「給与計算」「請求書作成」「見積り」等々をリモートでこなしている娘さんの場合は、メールの受発信や接続状況等々から、勤務実態を説明することもできます。

 また、法人の「親族役員」については、常勤しており、その役割に応じた役員報酬を支払っている場合には、問題はありません。
 注意が必要なのは「フル勤務以外の親族役員」や「非常勤の親族役員」の場合です。
 フル勤務以外の親族役員の場合には、やはり「職務内容と給与水準、勤務時間」をしっかり説明できることが大切です。
"「取締役や理事になれば、月額10万円は大丈夫ですよね..." という質問をよく頂きますが、金額の「形式枠」はありません。
「取締役・監査役・理事・監事」などは、法律上の役割があり、非常勤でも決して「報酬=ゼロ」ではありませんが、月額報酬を支払っている場合には、「職務内容」の説明が求められます。非常勤の場合、「年額いくら」又は「月額でも少額」のケースが多いからです。

「前社長」が退任後に非常勤取締役となり、後継者への助言役という立場・職務であれば、月額20~30万円程度までは原則的に認められますが、単なる非常勤役員の場合には、注意が必要です。

②その支払は「給与か?・外注費か?」は、よく確認される事項

個人に仕事の対価を支払う場合、社員であれば「給与」、事業者であれば「外注費」です。

 外注費であれば、税金や社会保険料の天引きもなく、その分の手取りが増えますので、「外注扱いにしてほしい」という要望もあると思います。また会社側としても、「社会保険料の負担」がなくなり「消費税も控除できる」として「外注」の方がよいのでは...と考えるところもあると思います。

 税務調査において、個人事業者、特に一人親方や社内外注や傭車についての支払いは重点的にチェックされます。

視点は...「本当は給与なのに、外注扱いをしていないか?」

 外注費扱いしていたものが税務調査で「給与扱い」とされた場合には、源泉所得税の課税と消費税の控除否認による課税が同時となり、大変な税負担となります。
 では、何をもって「給与か、外注費か」を判断するのか。税務上の具体的判断は、次の9項目を総合的に勘案して判断します。

給与扱い的判断 外注費扱い的判断
①支払の根拠 時給・月給など 業務請負的な単価決め
②請求書の発行 ない ある
③指揮監督 作業の具体的な内容・方法等の細かな指示 指示書などの交付にて通常程度の指示のみ
④支払の締め日と支払日 会社の一般支払の締め日・支払日ではなく、社員の給与の締め日・支払日 会社の一般支払の締め日・支払日
⑤福利厚生(忘年会等) 会社の福利厚生費負担 本人の負担又は交際費
⑥工具・用具等の負担 会社の負担 本人の負担
⑦危険負担(材料の賠償など) 会社の負担 本人の負担
⑧残業手当や通勤手当・賞与 ある ない
⑨タイムカード・出勤簿などの勤務管理 記入あり 記入なし

 いかがでしょうか。確かに「社員と外注」は左記のような違いがあります。仕事によっては、「請求書はなく支払確認票への押印にて代用している」場合等もあり、上記のうち一つでも「給与扱い的」になれば、NGというわけではありません。
 しかし、3 つ以上「給与扱い的判断」になった場合には、外注費と言えるのかの疑問がかなり指摘されやすくなります。また、⑧はこれだけでもNG的要素です。
 外注費の扱いをする場合には、この9項目が基準となりますので、ご確認ください。

③「経費」の中に、他社他人の負担分や個人的負担分が入っていないか

 税務調査の順序としては、最初に「売上・仕入・在庫」の確認、次に「経費・人件費関係」の確認と進むケースが大半です。
 経費は、その性格によって様々な確認の視点がありますが、例えば、接待交際費・会議費・厚生費・消耗品や備品関係・慶弔費などについては、次のポイントの確認がされます。

1. 他社他人の負担分は入っていないか。
2. 個人的負担分は入っていないか。
3." その年度において" の経費が計上されているか。

<他社他人の負担分は入っていないか...の確認例>
 ① グループ会社がある場合には、それぞれの会社ごとに負担すべき経費になっているか。他社の分が混ざっていないか。特に赤字会社がある場合には、黒字の会社への「付け替え」はないか。
 ② グループ会社の全社の支払いを持株会社や代表会社が行っている場合には、各社負担分の按分根拠や立替インボイス形式などは揃っているか。


<個人的負担分は入っていないか...の確認例>
 ① 商品券や金券での中元・歳暮などの贈答については、相手先の記録が確実にさているか。ブランド品の交際費・厚生費計上については、相手先の記録が確実にされているか。(従業員向けの場合には、高額だと給与課税の指摘も)
 ② 飲食関係費が多い場合、営業日以外の日(例えば土日)についての具体的な支出内容は何か。(家族の飲食関係ではないか)
 ③ 「一人飲食費・一人交際費」が多い場合の支出内容は。(誰のどのような飲食費か。昼食は原則個人負担)
 ④ 社名入りの車など「事業専属がわかる車」以外の「車」の台数が多い場合の使用目的と使用者は誰か。
 ⑤ 慰安旅行の具体的な参加者は誰か。(外注先や得意先がいれば接待交際費計上。家族分があれば原則個人負担)


< " その年度において" の経費が計上されているか...の確認例>
 ① 翌年度以降の様々な経費が" 前倒しでズレて" 入っていないか。(請求書や納品書などの確認)

④「期末売掛金」と「期末在庫」は適正か、税務調査の必須調査事項

 税務調査においては、最初に「売上・仕入・在庫」の確認から入るケースが大半で、その際には次の点を確認しています。

① " その年度において" の" 売上" が計上されているか?
 (=翌年度に売上がズレていないか」
② " その年度において" の" 経費" が計上されているか
 (=翌年度以降の経費が前倒しでズレて入っていないか」

 つまり「期ズレ」がないか、が税務調査の必須調査項目です。
 まず売上ですが、3 月決算の法人を例にすると、決算期末である「3 月末」までの売上がきちんと計上されているか、が重点調査項目です。
 「売上」とは、製造業であればその製品の「引渡し=納品・検収...」をもって、サービス業であればその「仕事の完了=役務の提供」をもって計上します。入金ベースで売上を計上する訳ではありません。
税務調査では、決算期末において、「未計上の売掛金」がないかを細かくチェックされます。

 一般的な流れとして、売上について「月ごと」に締めて、1 ヶ月分の売上の合計をまとめた請求書を得意先に送付しているケースは多いと思います。
 その際に、注意を要する点としては、例えば25 日で請求書を締めているとしたら、決算月の翌4 月送付の請求書に「3 月26 日~ 31 日までの納品」が記載されていることになり、その分も当然に3 月の売上( 売掛金) となります。調査ではそれらの点について、決算月前後3 ヶ月の請求書を中心とした確認が行われます。

 次に「期末在庫」の確認も重点調査項目です。在庫は、当然に「その年度に売れていないもの」ですので、「在庫」となっている商品の原価については「その年度の経費」にはならず、棚卸資産として把握しなければなりません。したがって税務調査では、決算期末前後の商品や材料の仕入れの請求書・伝票から、「仕入をしたが売れていないもの=在庫に載っているか」を確認します。
 また、期末在庫について、その「単価」については、ほとんどの会社では、「最終仕入原価法」を適用しています。「最終仕入原価法」とは、期末在庫の金額を出す際に、「実際にはいくらで仕入れたか」に関わらず、期末に一番近い同一商品の仕入単価にて、その商品の期末在庫全体の「単価」とするものです。
 したがって、在庫数量を調べた後、その商品の「最終仕入の単価」を掛けた金額が、在庫の金額となり、実際に仕入れた金額とは異なりますので、ご注意ください。(会社によっては、他の方法を採用している場合もありますので、ご確認ください)

⑤減価償却はいつから開始か?

 機械や建物の取得による減価償却費の計上の開始は、その資産を「事業の用に供した日から」が原則です。この「事業の用に供した日」は、その機械などの「納入日」とイコールとは限りません
 では、具体的にはどの日を言うのでしょうか。
 ポイントとしては、あくまでも「使い始めた、又は使い始められる日」です

 例えば機械であれば、原則として「機械が納品され、試運転が終わり、生産を開始している、開始できる」必要があります。したがって、機械が「納品された、据付が完了した」だけでは、「事業の用に供した」とはならず、減価償却費を計上することはできません。
 この点について、その機械の納品書・運搬の記録・通電の日・試運転の記録・検収記録・生産記録などが確認されます。
 「即時償却」などの特別償却をしていた場合には、「事業の用に供した日」がズレると大きな修正申告となる可能性もありますので、細心の注意が必要です。

⑥消費税の控除要件は揃っているか?

 消費税について、昨年10 月より「インボイス制度」に移行する大きな改正がありました。
「インボイス」については、「インボイス登録事業者になる・ならない」「インボイスの発行における記載必須項目」「受け取り時の確認」など多くの内容を「かわら版」で取り上げました。税務調査においては、「法人税又は所得税」と「消費税」は同時に調査対象となります。 
 その消費税については、大きな論点が、「支払った消費税の控除ができるか?」です。
 この点について、インボイス後においては、次の2 つの要件となります。

要件① インボイス( 正式名 適格請求書) の「受領要件」
インボイス番号・受取者・発行者・金額・支払日等々の所定の項目が記載された「インボイス(適格請求書)...請求書や領収書」を受領すること。
要件② 帳簿への「記載要件」
支払先、取引日、取引金額、取引内容を「帳簿に記載」すること。

 この要件が欠けると、消費税は控除できず自社負担となってしまい、税務調査で修正申告の問題となります。
 また、「クレジット会社発行の利用明細書だけで仕入税額控除はできない」という点は要注意です。
 クレジットカードの利用明細書は、クレジットカード会社が一定期間に利用した分を網羅的に発行しているに過ぎないもので、取引相手である店舗が発行したものではなく、請求書等には該当しません。それぞれの利用店舗で発行されたものが、請求書等として認められますので要注意です。

 税務調査は、日程の調整を中心に「税務署からの事前通知」が原則です。
 この「事前通知」は、「税務代理人= 税理士」を選任している場合には、その税理士に原則連絡がきます。
 その後の日程調整や調査に関する具体的な事前通知内容の聞き取りなどは、当社にて確実に行いますので、ご安心ください。
 税務調査に関するご質問などあれば、是非弊社担当までお問合せください。

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