職場の熱中症対策が義務化
2025/07/09
近年、記録的な暑さが続き、熱中症による健康被害が増加しています。職場においても熱中症による労働災害が発生しており、その対策の重要性が高まっています。
こうした状況を受け、2025 年6月1 日から労働安全衛生規則が改正され、事業者に対し職場の熱中症対策が義務付けられることになりました。今回は、企業が具体的に講じるべき対策、そして義務違反の場合の罰則について解説します。
1.義務化で具体的に求められる対策
① 熱中症患者の報告体制の整備・周知
事業者は、暑熱な場所での作業など「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行う場合、作業従事
者が熱中症の自覚症状がある場合や、他の作業従事者が熱中症の疑いがあることを発見した場合
に、その旨を報告させる体制を整備しなければなりません。 また、整備した報告体制は、作業従
事者に対して周知する必要があります。特に一人や少人数で作業をする場合は、具体的な報告の
手順や連絡体制を伝えることが重要です。
② 熱中症の悪化防止措置の準備・周知
事業者は、同様に「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行う場合、あらかじめ作業場ごとに、
熱中症の症状悪化を防止するために必要な措置の内容およびその実施に関する手順を定めなけれ
ばなりません。措置の内容としては、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診
察または処置を受けさせることなどが挙げられています。事業者が定めた措置の内容および実施
手順は、作業従事者に対して周知する必要があります。
2.義務化の対象となる「熱中症を生ずるおそれのある作業」とは?
事業者が上記の熱中症対策を行う必要があるのは、「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときです。
対象となる作業は、WBGT(湿球黒球温度)が28 度以上または気温31 度以上の環境で、連続1 時間以上または1 日4 時間以上の実施が見込まれる作業です。
WBGT は、熱中症のリスクを示す指標のことで「暑さ指数」とも呼ばれています。
W=Welt B=Bulb G=Globe T=Temperature
警告アラームを知らせる手段として「黒球式熱中症指数計」を導入している企業も多いです。
3.対策を怠った場合の罰則
改正労働安全衛生規則で定められた熱中症対策を怠った事業者は、都道府県労働局長などから作業の停止や建設物等の使用停止・変更などの使用停止命令等を受けるおそれがあります。
さらに、熱中症対策の実施義務に違反した者は、6 カ月以下の拘禁刑または50 万円以下の罰金に処され、法人に対しても50 万円以下の罰金が科されます。
熱中症による労働災害が増加している現状を踏まえ、企業は法定義務の遵守に加え、WBGT に基づく作業環境管理、適切な水分・塩分補給、暑熱順化、健康管理、労働衛生教育など、幅広い予防対策を効果的に実施することが重要です。 |